IKEZ
◎イケズカタログとは?
イケズカタログとは、私たちイケズガールズがみなとみらいで半年間フィールドワークを
行って発見した「いけず」な事例をイケアカタログ風に集めたものです。「いけず」とは
ちょっと意地悪で、でもいとおしさを感じるモノや人に対し用いられる関西弁ですが、
この活動においては「まちを歩いていて遭遇する、“もう少し頑張れば使いやすいのに”と
いったもどかしさを感じるモノや状況」を指します。
イケズカタログは、そうした状況を一時的に緩衝し、みなとみらい…ひいては都市全般の
暮らしを楽しくするようなヒントがたくさん散りばめられているのです。
◎なぜカタログをつくるのか
まちの「いけず」緩衝事例をまとめて提示する方法はたくさんありますが、私たちはあえ
てカタログという方法を採りました。それも、IKEAカタログをパロディするという形で。
それは、IKEAと「いけずなまち」の観点で見たみなとみらいが4つの共通点をもつと考え
たからです。
IKEAのカタログをパロディして「いけず」事例を提示することで、私たちは単にみなとみ
らいの調査結果を明らかにするのみならず、双方が理想とする「現代的都市型社会生活」
への批評活動を行いたいと考えています。みなとみらいの人気を鑑みると、理想都市としてのイメージはある程度達成されているのは明らかです。ただし、みなとみらいを利用する
人びとが「自分たちが積極的な姿勢でまちを楽しむ」という意識をもって活動すれば、
より魅力的な都市になるのではないでしょうか。
◎活動の意図
本活動は、私たちが所属する慶應義塾大学加藤文俊研究室のプロジェクト「いけずなま
ち」の一環として実施しています。「いけずなまち」では3つのグループがそれぞれ異な
る視点をもって調査を行っています。
私たちのグループ”イケズガールズ”は、「まちの「いけず」は、ちいさな工夫で緩衝でき
る」をモットーに、みなとみらいで遭遇する「いけず」を範囲内で手に入るモノや
人びとのふるまいによって一時的に緩衝するための方法を考えています。
この活動を続けることで、みなとみらいはパブリックスペースの「作り手」と「使い手」
の間に大きな距離感があり、それによって「いけず」が生じているのではないかという
仮説が生まれました。みなとみらいのような近代になって整備された都市は、何らかの意図
をもってパブリックスペースの設計を行う「作り手」と、そうして作られたパブリックス
ペースを一時的に利用する「使い手」が別個の存在として考えられがちです。そのため、
「使い手」は目前にある空間を提示された通りに使うか、用途がわからないものがあれば
見なかったことにして一切使わないか、といった選択をとることが多いのです。
しかし、本来まちは「使い手」側も自らが使いやすいように工夫して利用すべき場所では
ないでしょうか。「使い手」の工夫といっても、あまり難しいことではありません。
謎のポールに空いた穴にカイロを置いて手を温めるなどといった「『いけず』な空間を
より楽しく使う工夫」を「使い手」の目線から提示することで、都市を利用する人びとに
都市を能動的に利用する楽しさについて知っていただきたいと考えています。また、イケズ
カタログは実際に都市をどう使いうるか示すものでもあるので、「作り手」を自負する
方々にとっても都市デザインのあり方を考える手がかりになりうるでしょう。
◎フィールドワークの様子
私たちは「研究者」ではなく「利用者」という意識でまちに向かうことで、素朴に「いけず」
だと感じる状況と出遭います。その上で、それを緩衝する方法を考え、実践し、記録していき
ました。2016年12月23日現在、176個の「いけず」事例が集まっています。それらひとつひとつを選別し、カタログに反映させていきます。